高齢者用うつ評価尺度(Geriatric Depression Scale:GDS)>とは
高齢者用うつ評価尺度(Geriatric Depression Scale:以下GDS)は高齢者を対象としたうつ症状のスクリーニング検査です。質問項目が30問のものがありますが、今回は簡便に行えるためより普及している15問のものをご紹介します。
※インターネット上では杉下ら※参考文献1)の作成したGDS短縮版とはやや異なるものが多くみられました。また、最初の4問でうつに該当しなければ評価を終了するとしたり、うつ状態を示す点数も異なるなど、杉下らの論文には書かれていない点もありますが、このページでは杉下らの作成したGDS短縮版を元に載せています
GDSの方法
GDSは質問紙法で、原則として自己記入式となっています。しかし必要に応じ口頭で質問項目を読み上げて回答してもらってもかまわないとされています。
対象者には「はい」か「いいえ」で答えてもらい、うつ症状に関する答え(下線)を1点として計算します。
【過去1週間の気分に最も近い答えを選んでください】
1.あなたは、あなたの自分の人生に、ほぼ満足していますか?
(はい・いいえ)
2.これまでやってきたことや、興味があったことの多くをやめてしまいましたか?
(はい・いいえ)
3.あなたは、あなたの人生は空しいと感じていますか?
(はい・いいえ)
4.しばしば、退屈になりますか?
(はい・いいえ)
5. あなたは、たいてい、機嫌がよいですか?
(はい・いいえ)
6.あなたに、何か悪いことが起ころうとしているのではないかと、心配ですか?
(はい・いいえ)
7.たいてい、幸せだと感じていますか?
(はい・いいえ)
8.あなたは、しばしば無力であると感じていますか?
(はい・いいえ)
9.外出して新しいことをするよりも、自宅にいるほうが良いと思いますか?
(はい・いいえ)
10.たいていの人よりも、記憶が低下していると思いますか?
(はい・いいえ)
11.現在、生きていることは、素晴らしいことだと思いますか?
(はい・いいえ)
12.あなたは、現在のありのままのあなたを、かなり価値がないと感じますか?
(はい・いいえ)
13.あなたは、元気一杯ですか?
(はい・いいえ)
14.あなたの状況は絶望的だと、思いますか?
(はい・いいえ)
15.たいていの人は、あなたより良い暮らしをしていると思いますか?
(はい・いいえ)
*0~5点:うつ症状なし/6点~10点:うつを示唆/11点以上:明らかなうつ状態
GDSはどのような際に使用されるか
高齢者のうつ症状を評価するためには、従来の評価では適切な結果が得られにくいため、高齢者の特性を配慮して作られたGDSの使用が有効とされています。
特に高齢者では、うつ症状でみられる精神運動抑制などの精神症状が認知症の症状と混同されたり、身体症状が不定愁訴ととらえられてしまうことがあります。そのため、正確にうつ症状のスクリーニングを行うことが、適切な診断・治療につながります。
また、脳血管障害の患者はうつ症状を伴いやすいため、その程度を把握し、治療に役立てるために使うこともあります。
GDSを評価するうえでの実際の臨床の注意点
「はい」「いいえ」で答えるため比較的簡単な検査ですが対象者の協力が必要であるため、失語症や認知症がある場合は検査結果が正しく得られない可能性があります。
また、心理状態を答える検査のため、実施の際に対象者が不快に感じる可能性もあります。事前に検査の目的や理由について十分に説明すること・回答しやすい雰囲気を作ることが大事です。
また、本当にGDSを実施する必要があるか・実施することで対象者にマイナスの影響がないか、担当者間で十分に検討も必要です。
実施の結果うつ傾向と判断される場合は心療内科や精神科へのコンサルテーションも必要になる可能性があるため、主治医も含めて実施について慎重に検討することをお勧めします。
GDSを評価するうえで、わかりやすい書籍
1)杉下 守弘,朝田 隆:高齢者用うつ尺度短縮版―日本版(Geriatric Depression Scale-Short Version-Japanese,GDS-S-J)の作成について.認知神経科学 Vol.11 No.1:87-90,2009
2)三輪書店:作業療法ジャーナル 38/7 2004年増刊号 EBOT時代の評価法 厳選25